霧の向こうに

 
 私の記憶の中に、わけのわからない光景がありました。ぞれはいつも心のどこかにあり、幼い頃の記憶のようにも…、いつのものだかわからない…とにかく遠い記憶のように思えました。
 
 ずいぶん昔、その光景のことを、同じくらいの歳の人に尋ねたことがあったんですね。でも、同級生の友達には首をひねられ、幼馴染に話したら、「何を気持ちの悪いことを言ってるの! そんなもん、見たことないわよ!!」と、怒り出される始末。
 
 それはとんでもなく古い感じの場所で、身震いするくらい気持ちの悪い光景には違いなかったのですが、それがどこにあって、どういうものだったのか、霧の向こうで見えないのような記憶の出所をはっきりさせたくてしょうがなかったんです。でも、とうとうここまでそれを探し出すことはできませんでした。その理由は、知っていると言う人に出会えなかったということもありましたが、実際に見たと思ってはいるけれど、もしただの夢だったとしたら、えらくまずい夢(夢判断で言うと…)だということで、いつからかそれを口にしなくなってしまったからなんですけどね…^^;。
 
 ところで、前回書いた『韓国の美をたどる旅』の中に、こんな一節があります。
 
 「真冬になると、蔵に貯蔵された穀物を狙ってネズミが忍び込んでくるが、そのネズミを狙って、今度は蛇が集まってくる。おぞましく、時には危険極まりない蛇を目につく所で管理したかった昔の人は、初めからタンジ(小さなつぼ)をひとつ、片隅に置いておいた。”オプタンジ”と呼ばれる蛇の住処である」
 
 「!!!」
 
 記憶の霧が晴れた瞬間でした。そして、それからもうそのことを気にしなくてよくなりました。
 
 
 
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