『光と風の間(はざま)で』総本家

総本家なんで、あれこれあります

オットケ・ソウル(hikari的初めてのソウル旅)8(一部加筆)

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 京都の広隆寺の弥勒菩薩(正確には、弥勒菩薩半跏思惟像〔読みは、「みろくぼさつ・はんかしいぞう」。「はんげ」とする場合も。最初に本でこの仏さまを見たときに「はんげ」だったので、私はついついこちらで読みますが)を知っていますか? たぶん、教科書でごらんになってると思うのですが、片足をもう一方の足にかけ、わずかに傾けた顔にそっと指を当てている、あの像です。

 国宝1号のあの仏さまは、渡来人であった秦河勝(はたのかわかつ)という人が、この広隆寺を創建するときに、聖徳太子(今は厩戸王子というべきですかね?^^)から本尊とするようにといただいたものだそうで、赤松の一本木造りのこの像も、かの国から渡来したものだという話があります。

 確かにパンフレットにあった博物館の像の写真も、形はもちろん、どこか似た面差しでした。実際見るとどんなかしらと思いながら、展示室の位置を確かめてそこに向かいます。

 そしてたどり着いた部屋。ガラスに囲まれたその弥勒さまは、ぐるりと周りを回れる空間を空けて、入った位置からすると、少し向こう側にたった一人(?)でいらっしゃいました。前に立って覗き込むように見ると、広隆寺の弥勒菩薩よりは、ほっぺが豊かな感じです。私は、広隆寺くらいの方が好きかな~なんて思いながら、後ろに下がり、彼の全体像を見るべく5人くらいかけられる椅子にどっかりと腰を下ろしました。

 その時、何人かの方が入ってこられた気配が…。そちらを振り向くと、70代後半から80代くらいの方が男女5人で立っていらっしゃいました。私、あわてて立ち上がり席を譲ります。わりと無愛想に一人のおばさまが座られた後、同じ団体かと思われる方たちがどんどん入ってこられ、部屋はすぐにいっぱいになりました。

 そこに博物館の研究員らしき方が入ってこられるにいたっては、私は出ることも動くこともできなくなり、弥勒さんからすれば右肩後方の位置の壁に張り付くことになりました。そういえば、この博物館の違う像の前で、こんな風に壁によっかかっていた人の写真を来る前に見たな~と思ったのは少したってからで、この時はとにかくおろおろしていたのです。

 定期的に、研究員さんの説明の時間があると書いてあったように思いました。その時間帯に重なってしまったのでしょう。私が韓国語をちゃんと理解できるようであれば、これはとてもラッキーな時間だったのかもしれないのですが、「聞いたことがある言葉があるな」程度の私は、まいったな~と思うだけです。

 そのうちに諦めがつき、「最後までお付き合いしましょ」と思ったとき、気がついたことがありました。日本でこういう年齢の方のサークルの旅行がある場合、たいていは男性リーダーの方が行き先を決め、女の方たちは、それにたいして興味はないけど、お友達と話したり、おいしいものを食べたり、おみやげにできそうなものを見て歩いたり…というのを楽しみに旅行について行くというのが大半らしいんですね。

 今目の前の方たちも、研究員の方が、「こうなんですよ~」と説明されていたようなときに、「お~」と感嘆の声をあげられるのは男性の方たちで、女性の方は後ろでふ~んてな態度でいらっしゃるんです。いずこも同じかもって思えて、ちょっと笑えました。

 さて、人間ウォッチングを終え、初めて斜め後ろから弥勒さんをちゃんと眺めたとき、はっとしました。彼(彼女?)の背中から顔の後ろ側の姿の美しいこと…。真正面から見たのではわからない、はかなさがありました。広隆寺の弥勒菩薩はどうなんだろう。この位置から彼を見ることは、できないんですよね…。

 それに見入っている間に、説明タイムは終了。皆さん満足げに(特に男性陣は)出て行かれます。そして、私はまたひとりになりました。ゆっくりゆっくり、弥勒さんの周りを歩きます。そして、また正面の椅子に。最初に見たときとは違う感慨が。なんだか、弥勒さんと通じ合えたような妙な感じがしました。

 そうそう。もうひとつ、気がついたことがありました。たとえば、私がこういう仏像を見たとき、↑でも何気なく書きましたが、私は「仏さま」として見ます。姿に見ほれることはあっても、どう優れているかとか、そういうことに興味はほとんどなくて、いわば、実際するかどうかは別として、ついつい手を合わせて拝みたくなる存在。心を通わせたくなる存在なんですね…(実際、心で話しかけ、最後はこそっと手を合わせ、頭を垂れてさよならしてきました…^^;)。

 もちろんここが博物館ということもあるでしょうが、、みなさんの様子を見ていると、あちらの方にとって、これはあくまでも優れた「美術品」なのかなという感じを強く持ちました。そして、キリスト教の方の多いお国柄かしらね、と。けっこう仏像好きなので、私がそう感じただけかもしれませんけどね…。

 それはともかく、一度も彼( 彼女?)に会ったことがなくて、今度見に行こうと思っている方へ。ぜひ横から斜め後ろからと彼を見てください。その背中には、不思議な哀愁があります。


 (ここの博物館では、フラッシュをたかない限り、かなりの場所で写真が撮れます。画像は、その通路で撮ったものです。ただし、この弥勒菩薩半跏思惟像は撮影厳禁になっているので、写真を撮ったりすると、血相変えた係の方がやってきて、怒鳴られる可能性が大です…^^;。)