その日。私は用事を済ませ、叔母の住むマンションに向かっていました。
歩き慣れた道。歩き慣れたエントランス。使い慣れたエレベーター。ちょっと考え事をしながら押した、6階の数字。エレベーターが動き出しても想いをめぐらしていると、エレベーターが止まりました。
私がエレベーターを降りるのと入れかわりに、にぎやかにエレベーターに乗ったのは、4人の男の子たちです。中1くらいかな~なんて思いながら、私は叔母の部屋の前に。
ピンポ~ン。シーン。「ん?」。叔母は今日は一日いるといっていたはず。聞こえなかったのかしらと、もう1回ピンポ~ン。シーン。「あん?」どうしたんだろう。急に買い物にでも出掛けたのかしら、と、さらにも1回ピンポ~ン。シーン。
いや。やっぱりいおかしい。私がこの時間に来るのがわかっていて、黙って出掛ける人ではないのです。中で何かあったのではと思い、思わずドアノブを握り、ふとドアの上を見ると…。見慣れぬタイプの防犯カメラが…。そして…。「違う! 名前が違う!」。
瞬間悟りました。そして、そう「脱兎のごとく」というのは、こういうのを言うんでしょうね。とにかく今の自分が考えられる中で、生涯でいちばんすばやくその部屋の前を逃げ出したんです。
エレベータの前まで行くと、やっぱりと思いました。そこは、6階ではなく4階。どの階も同じつくりのマンション。な~んの疑問もなく、叔母の部屋だと思ってピンポ~ンを繰り返していたあの部屋は、別のお宅だったんですね~ーー;。
あ~。この年になって、ピンポンダッシュをするなんて~(T.T)。どうぞ。お留守でありましたように~。