去年の春、『ホテル・ビーナス』という映画を見ました。日本映画なのに、全編韓国語で演じられ、そのほとんどはモノクロで綴られていく映画です。
舞台は、国籍不明のある街にある、カフェ「ビーナス」。ここに来て、「ビーナスの背中を見せてください」というひとことを伝えた人だけが、その裏の「ホテル・ビーナス」の住人となれるのです。
そこには、わけアリの住人ばかりが住んでいて、そのほとんどは今を生きていないかのよう。その人たちが、それぞれに再生していく映画…と言ってしまうと、ネタばれになってしまうでしょうか(汗)。
私にとっては、思うところに思うものがきちんと収まっていく、後味のよい映画という感じでしたが、はっきり言って、大スペクトラムがあるわけでもなく、はらはらドキドキが映画の楽しみ~と思っている人にはつまらないかもしれないですね。
私は、少々参っているときにこの映画を見ました。そして、このホテルのオーナーのビーナスさんのひとことに、自分で気づかぬうちに心の底に押し込めていた、重石をとってもらいました。「ああ、そうだ。そういうことだったんだ」って…。映画には、そんな拾い物もありますね。
この映画の主人公チョナンを演じるのは、SMAPの草なぎ剛さん(知ってるか…)。その関係か、終わり近くで、謎の青年香取慎吾君が登場します。「このシーンは要らなかった」という方もいたようですが(たしかに、あれはぁ…と思う部分ではあったのですが)、彼とその街に住む黒人男性との会話の一言で、私は許しました(笑)。
あまりにカラフルでコミカルな青年は、その男性に、「ビーナス」の場所を英語で尋ねます。怪訝な顔をする男性。青年は、「わからないの? 世界のことば、英語で聞いてるんだよ」みたいなことを畳み掛けるんです。それに対して、男性は「ここには、ここのことばがある。それを使え」みたいなことばを吐き捨てるんですね(「みたい」ばっかりでゴメンナサイね)。そのことばが、なんか、私にはうれしかった。アジアには、アジアの共通語があっていいと、漠然と思っていたからかな…。「何で欧米圏の人だけ楽するんだ」というやっかみでしょうか(笑)。
最近私がよく流しているのは、この映画のサントラです。その映画のように、あるべき所にあるべきものがもどっていくような気持ちになれます(この中の曲を携帯の着メロにしたいんだけど、方法知りません? 知ってたら教えて~)。
これから、雨のシーズン。もし、暇をもてあまして、レンタルショップに行くことがあるようなら、一度手にとって見てもらうのもいいかなと思い、書いてみました。
※タイトル「コピ マシ ミョンソ」は、韓国語で、「コーヒーを飲みながら」の意味。書庫の、「ちょっとおしゃべり」も、これに変更しました。