『光と風の間(はざま)で』総本家

総本家なんで、あれこれあります

やさしい風景

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nusikaranoyasasisa


 母の通院につき添っていった日から不調で、数日あまり動けずにいました。少し良くなって、居間のソファにゴロゴロしながらYoutubeを見ていたときのことです。

 特に何を見たいということもなかったので自動再生していたら、どういうわけか近畿地方の限界集落の風景をただ淡々と流す番組と出逢ったんです。で、それが続くの。

多分それまで見ていたものの傾向などに関連したものが流れてくるんだと思うんだけど、特に限界集落マニアでもないし、そういうのを見たこともないんだけどなぁなんて思って見ていたんです。ところが、見始めたら何だか思うことが多々あって…。


 そもそも限界集落っていうのは、山深いところが多いのでしょうかね。私の見たのでは、人の姿が見えなくなった家々ばかりじゃなく、あまり手が入らないままの美しい山々や川の風景がたくさん出てきてました。その風景の美しいこと!


 家もね。番組をつくられている方の方針でそういう家屋を中心に撮ってらっしゃったのかもしれないけど、廃墟のようになっている家はあまりなくて、古いのは古いんだけど、しっかりしてそうな立派な家屋が多くて、少し修理をすれば十分快適に住めそうだなぁと思えたんですね。

もったいないなぁ。こんなきれいな風景のところに、まだ住めそうないい家。それを捨てて出て行かれたんだなんて思ってしまったんだけど、雪が多くて、仕事に行きにくかったり、急病でも救急車がなかなか来なかったり、近いところにお買い物ができるところがなくなってしまったりなどと、不便なことはたくさんあったんでしょうね。一人になった高齢の親御さんを子供さんが呼びよせられた…なんてこともあったかもしれない。

田舎とはいえ、駅もバス停も徒歩5分以内に住み、本当の暗闇なんて知らない私には、想像もできないような大変なこと、きっとまだままだありますよね。


 畑や空き家になった家々、廃校になった学校の跡、閉められたお店の跡など見ていると、そこに人々がいて、にぎやかに動いていらした風景が見える気がしました。多分、食料品店などの店内には、「昭和な歌」が流れていて、あーだこーだ話の花が咲いていたんだろうな。そう思うと、ちょっと切なくなってね。


 そんなことを思ううちに、思わぬことに気が付きました。それは、家の周りをきれいに片付け、雨戸をしめて出て行かれたんだなとわかるいくつもの家々の敷地や、そのお宅に至る道の草が、きれいに刈りとられていることです。

 いつか、これもYoutubeで偶然流れてきた、海の向こうの国の、首都のビル群が目の前にあり、そして、住んでらっしゃる方もそれなりにはありそうなのに(現在使われているような車がところどころにあるのでそう思った)、かなりあるらしい空き家の庭どころか、道の両側にまで腰から背丈くらいの草が生い茂っていたのと比べると、まるで別天地です(あっ! あれを見たからこの限界集落が出てきたの?)。

 これは、外に移っていかれた住人さん(あるいは、頼まれた方か)が、ご近所に迷惑をかけないように時々来て草刈りをしてらっしゃるか、近所の方が自発的に刈ってあげられているということでしょう。何か、感動…。

 そんなお宅の軒先に、こんな言葉を彫った丸太の椅子↑が(「どうど」がまたいい(^-^))。


ただ川のせせらぎと蝉の声だけが聞こえる、集落でのことでした。