『光と風の間(はざま)で』総本家

総本家なんで、あれこれあります

おじいさん、亀になる

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いくつか前の記事に、最近、何度も見かけた固有名詞があったという話をしました。


  『「かねもち」じゃなくて、「かもち」ですから』
 https://www.sakusamenomori.com/entry/2020/01/18/%E3%80%8C%E3%81%8B%E3%81%AD%E3%82%82%E3%81%A1%E3%80%8D%E3%81%98%E3%82%83%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%A6%E3%80%81%E3%80%8C%E3%81%8B%E3%82%82%E3%81%A1%E3%80%8D%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8B%E3%82%89%EF%BD%9E


 残りのもう一つ、それがなぜか「浦島太郎」だったんです。何でまたとは思うんだけど、遠い昔の再放送のサスペンスドラマでまで、丹後にある、浦島太郎伝説ゆかりの神社が登場するありさまで…。その神社についても、他の機会にも2度見かけたし、とにかく浦島太郎という名前を何度も見たんですね。

 正直な話、昔話で知っている程度で、特に興味をそそられたお話ではありませんでした。…というか、たぶん、これを読んで下さっている方はご存知の話だと思うので、内容を改めてお話しはしませんが、「あ~あ。約束を破っちゃったから、おじいちゃんになっちゃったじゃない~」と思った程度でした。それを改めて調べて見ると、「あらま。そうですか」と思わされることが多々あったんですね。

 明治時代の厳谷小波(いわたにこなみ)という作家が書いた、『日本昔噺(むかしばなし)』というのを作るにあたって、その中の一つとして、「子供向け」に作り変えたのが、あなたや私が知っている、あの『浦島太郎』のお話らしいんですが、実はこのお話、『万葉集』や『日本書記』など、とんでもなく古い文書にも書かれているみたいなんです(「万葉集」にねぇ…。あったのかぁ。おぼえてないなぁ)。

 古くからあったそのお話の、私たちが知る物語のアウトラインがつくられたのは、室町時代の『御伽草子』だと言われるそうで、「昔丹後の国に浦島太郎という、24~25の(男前の)男がいた」と、年齢まで特定されているよう。それ以外に、ストーリーが違うものがいくつもあるらしいんですね。

 私たち(ここで強引にあなたも仲間に入れる)の知っているお話では、子供たちにいじめられていた亀を、浦島太郎が助けて海に帰してやり、そのお礼にとやってきた亀に連れられて竜宮宮に行ったということになっているんだけど、実は乙姫様自体が亀で、美しい女に化けて、海の向こうにある竜宮城に帰りそびれたから連れて言ってくれないかと太郎に頼み、その彼女の魅力にひかれて竜宮城に連れて行ったというのもあるらしいんですね。

 その後は、ある種共通したものがあって、「子供向け」でないものには、あちらでの鯛やヒラメの舞い踊り…とされているのは、実は乙姫様とのめくるめく愛の日々だったとされているものが多いよう。

 それが3年ほど続き、何も言わずに置いてきた両親がやっと気になりだして帰りたい想いがつのり(一旦戻って、幸せにやってるからねと伝えて、すぐ竜宮城に帰るつもりだった…というのもあるらしいんだけど)、「開けてはいけない玉手箱」をもらって帰ってみたら、家はないわ、知っている人もいないのは当たり前。何と700年がたっていた!!

 そりゃ、知ってる人はいないわな。いたら恐い。というか、700年たってるとなると、自暴自棄になって(?)玉手箱を開けた太郎が、おじいさん状態ですんでるのがおかしい。700年たてば、もう骨ですって、骨! 場合に寄っては土に帰っているかも。時系列がずれてる。…って。そういうお話は好きだけど…(おいおい)。

 大体、太郎を中途半端に変身させた「玉手箱」って何ぞや。開けてはいけないものなら、最初から渡さなければいいとも思うけど、渡すには渡す理由があったんでしょうね。もしかして、太郎を骨にしてしまわないための、ぎりぎりの「生命維持装置」だったとか?

 そうそう。その後のお話というのがあるのを知っていますか? 知っている方もあるかな。そのあと太郎は鶴となって、何を思ったか蓬莱山という山に飛んでいったというんです。

 こうなると、時間軸がずれた話のうえに、変身ヒーロー物ですよ(ヒーローか?)。そして、です。ずいぶん時がたって、鶴の太郎の元にやってきたものがいたというんですね(転居届をだしていたのか。人から鶴への変身届は?)。

 太郎の元に…となると、登場人物が少なく燃費のいいこのお話のこと…。やってきたのはやっぱり、乙姫様!! それも、亀に戻った乙姫様なんです(亀だから、来るのに時間がかかったのかしらね)。

 どうやって太郎の居所を知ったのか、もしかして、帰る前の太郎に術でもかけていたのかわからないけど、二人はその蓬莱山でめでたく夫婦となり、幾久しく暮らしましたとさ…(そのお話が、「鶴は千年。亀は万年」と言う言葉のもととも、祝い事で鶴亀の掛け軸が使われるようになったもととも言われるそうな)。めでたし、めでたし‥。…って、最後は純愛ロマンスかい! いや、この流れも嫌いじゃないけど…。

 いやはや、すごいお話です。そんな物語がつくられるに至ったのには、何か隠された事情があるんですかね。浦島伝説。興味がわきました。