『光と風の間(はざま)で』総本家

総本家なんで、あれこれあります

たかが言い訳、されど言い訳

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 ずっと前のちょうど今頃の時期。私は病院に通っていました。前に書いたことがあったと思うんですけど、階段から滑り落ちて階段途中に置いたワープロをかっ飛ばしたお陰で、左足の向こう脛がぱっくりと口を開いてしまい、緊急手術を受けて入院。そのあと、治療のためにしばらく通院していたんです。

 まだ入院していた頃のこと。私はもうひとりと二人で個室に放り込まれていました。その時期、その病院はかなり入院患者さんが多く、開いた個室を二人部屋として使っていたのです。私の相方は、陸上のアスリート。国内外の大会に参戦する選手で、怪我の治し方にも精通(?)していたお陰で、私の怪我にも色々いいアドバイスをしてくれました。

 私の退院時、「明後日来るね」と別れた後、まだまだいることになると言っていた彼女が、急に他県に慌しく転院したことで連絡がとれなくなってしまったのですが、そんな彼女との忘れられないエピソードがあるんです。

 昼下がり、二人で見ていたテレビでのあるスポーツの試合のあと、それまではおおらかだった彼女が、突然怒りだしたんですね。名前を言えば誰でも知っているあるアスリートさんが、試合後のインタビューで、自分の不調の言い訳をしたことが原因でした。

 「何、こいつ!」、彼女ははき捨てるように言いました。

 「アスリートは、同じフィールド、同じスタートラインに立った時点で誰でも立場は同じ。たとえ、親が死にそうだったとしても、下痢で体がぼろぼろになっていたとしても、外で誰かに足を引っかけられてどっかを痛めてしまったとかいうことがあったとしても。そこに立った時点で、すべては平等なんだ。誰かが勝手に言うならともかく、本人がこんな言い訳するなんて…。最低!」

 今になってみると、遠征先の不慮の事故で怪我を負った自分の無念さもあって、あれだけ強い調子になったのかもしれない、とも思うけれど、彼女の怒りに戸惑いながらも、「確かにね~」って思ったんです。だめだと思ったんなら、最初から棄権すればいい…。出るんなら、それを言い訳にしないこと…。彼女の言いたかったのは、そういうことなんですね。それは、それまでは気づかないことでした。

 良かったのか、悪かったのか、それ以来テレビでそういう(言い訳する)場面に出会うと、それまでとは違う印象を持ってそのアスリートさんを見るようになってしまいました。そういえば、今回のではなく、前回のWBCの時イチロー君に関してある国で巻き起こった騒動を覚えてらっしゃる方があると思います。

 インタビューの中の言葉がもとで、誤解されたんでしたね(と私は思っています)。その時のイチロー君のインタビューをちゃんと聞いていれば、彼がその国だから負けられないという意味で言ったのではなく、それが何処の国だろうが、同じ国に何度も負けるのはだめだという意味でその言葉を使ったのはわかるはず。型通りの日本語のしかわからない記者がそう言った(書いた)のか、他意があってそう言ったのかはわからないけれど、インタビューの言葉尻をとったような形であちらで報道され、ひどく叩かれた。でも、場外でのあまりの言われ方にも、彼は言い訳一つしませんでしたよね。

 その時、同室の彼女が最後に言った、「真のアスリートは、自分が大切だからこそ、言い訳をしない」という言葉を思い出したんですよね。まさに彼はそうでした。バットで借りは返すんだと決めていたのかもしれません。

 話は少しずれますが、インタビューつながりで…。一昨日女子フィギュアスケートの演技を見ていて、ふと思い出したことがありました。その場での出来事ではなく、この前の国際大会前のことです。言い訳とは話が違うかもしれませんが、たとえ深い想いがなく、大きなことになると思わずに話したことだとしても、国の名前を出さなかったとしても、さらに国民性が違うとしても、私には?でした。とても大きな?でした。その時の周囲の反応も…。

 私も、言葉尻だけでそう感じたのでしょうか。イチロー君の時の、かの国の人たちのように…。でも、彼女ブログでも書いていたんですね~ーー;。それが戦略になると思ったのでは、とかいう話もありましたねよね。私は今でも、そこまでとは思いたくないのですが…。

 そうだったとしても、そうでなかったとしても、それ以来、アスリートとしての彼女への信頼はなくなりました。違う国の人であっても、年齢関係なく、レベルの高い素敵な演技をしてくれる人だと、応援していたんですけどね。何年か後、「あんなことがあったけど、人間的にも素敵な人になったわね~」って言えるような彼女になっていてくれたらいいと、今はそれだけを思います。

 それにしても、スポーツに限らず、何言われても言い訳しないって人、ご存知の方にもいますよね? いや。すごい精神力だなって思改めて思います…。尊敬します。


(画像は、お話とは全然関係なく、鳥取の仁風閣。明治時代の西洋建築です…^^;)。