梅雨の高速

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 今日、行ったことのない親せき宅に急に行くことになりました。何せ行ったことのない場所でもあるので、その地区にご実家のあるご近所さん(わが家の遠縁でもある)のところに詳しい行き方を聞きに行ったんですね。
 
 「ああ。ちょうど実家に行く用事があるから、良かったらうちの車で一緒に行かない?(そのお宅に)連れて行ってあげるから…」。ご主人も、「それがいい」と言われるので、遠慮なくお願いしました。
 
 このお嫁さん(とは言っても、70代前半の方なんですが)、聞いた話では、私にとって信じられない生活をしてこられた人のようでした。きっついお姑さんに仕え、そのお姑さんが亡くなった後は、手は出さないまでも、男尊女卑の権化のような旦那さんとともに生きてこられた人だそうな。それも文句一つ言わず。
 
 ずっと前の家族ドラマのようなその生活はご近所で有名で、最近更にひどくなってきているというご主人の罵詈雑言に(お隣には、隣でさえビビるくらいのまる聞こえらしい)、「あんなくそじじい、ほっといてやればいいのに」と、自分の身に置き換えたお隣さんに言われるくらいの状態らしいんですね(母によると)。
 
 実は、きびしいお姑さんと生活してきた方をほかにも知っているんですが、ある時二人だけでご一緒したとき、話の流れであちらからその事情を話してくださったことがあったんです。その時、「ずっと、この人は他人だと思ってきたから、腹も立たなかったのよね~」とにこやかに言い放たれ、なんだか妙な、それでいてとてもすがすがしい気持ちになった…という事があったんですよね。
 
 さて、話は元のお嫁さんに戻ります。このお嫁さんの話によると、ご実家のある所までは車で片道40分くらいらしい。もしかしたら、その間にこの方からも人生を学ばせていただけるかも…なんて思いながら車に乗せていただくことになりました。

 そして、それは乗せていただいて、さっそく始まりました。「実は実家にいく用なんてなかったのよね~」。

 えっ? 今なんておっしゃいました?

  「いやいや。参るって、あの旦那とず~っと一緒だと(きやっ、きゃっ、きゃ

 文句も言わず、友達と遊びにも行かず、贅沢もせず、…仕えて、尽くしまくってる…って、言ってるらしいですよ、ご近所のみなさま。「一緒だと参る」って、「きゃはは」って… 

  「私ね、母が早くに亡くなっているのよ。父に、祖父に、兄二人。家に女がいる生活を知らないの。小さい頃から家のことをしてきてて、けっこう忙しかったのよ。子供の頃から友達と遊ぶ暇なんてなかったのね。だから、人形とかでもっぱら一人遊び。おまけに、旦那とは職場恋愛で、家柄が違うけど、子供が出来ちゃってるからしかたない…って、しぶしぶ結婚を許された…っていうのは知ってるでしょ?」。

  いいえ。はじめて聞きましたよ、それ…(聞いてても、だから?て感じだけど)。そういう話は、我が家ではなかったから…。ともに憤慨するような話は出てくることはあるんだけど(旦那さんの横暴とか…)。

  唯一の逃げ道が、ご実家へ行く…ということ。お兄さまの奥さんが亡くなって、高齢のお父様が健在。ご実家に女手がないということが、文句言われながらも一人で外出する理由になったんだそうな。

  「どれくらい時間が必要かなんてこと、あっちはわかってないから、家事に問題がない限りは嫌みくらいですむでしょ。だから、帰りは高速じゃなくて、遠回りになる道を帰るの。桜の時期は山桜の美しい山の道を走り、春は青葉がきれいに見える道を、紅葉はもちろんよね~」

 なるほど。

 「子供達が小さい頃はほんとに大変だったけど、お義母さんが亡くなって、子供が大きくなってからは、用もないのに実家に~って手を覚えて…。で、ほんとは行ってなくて、ドライブしてるとか…。悪いやつだよね~
 
 そうやって自分の心のバランスを取ってこられたんだなって妙に感心。
 
 帰り道。その人が言われました。「コーヒー飲む時間くらいあるでしょ? ちょっとつきあって。いい店見つけたんで、行ってみたかったの。でも、一人じゃ行きにくくてね。さぁ、捕まらない程度に高速飛ばして、うちを通り越して反対側に行くわよ~

  いや。知らないところで、はじけてらっしゃいました。そうだよね。それでいいんだわ。