三つの月~待たせたのに、たぶん申し訳ないレビュー~

イメージ 1


ずっと書かずにいた、ドラマ「三つの月」のお話です。一昨年の「月に祈るピエロ」、昨年の「月に行く船」に続いて、中部地方の山がちな町を舞台とした(すいません。土地に不馴れなもので、ちゃんとした地名をかけません)、「三つの月」。単発ドラマの三部作と聞きましたが、これで終わりなんでしょうか。全部違う主人公の話で、三作ともに登場しているのは、今回は、女性主人公の相手役というかたちで演じてらっしゃる谷原章介さんだけです。
 
上で、谷原章介さんが、「女性主人公の相手役というかたちで演じてらっしゃる」と書いたのは、今回の作品、出演時間は別として、前作2作が男女主人公両方の生活ぶりや、考え方を察することができる描き方になっていたのに対して、今回の作品は違ったからです。
 
かなりにネタバレで行きますが、今回は、町の食堂のおかみさんであり、毎日末期のがんを患う姑さんを病院に見舞い、いいところもあるんだけど、見栄っ張りで商売下手な旦那様を持ち、一人息子は、野球の強豪校に行っていて合宿生活(?)。たまに帰ると言っても、理由をつけて帰って来やしない…という生活を送る女性主人公側からの視点でほとんどが描かれていました。 
 
谷原さんの演じたスランプの作曲家というのについては、彼に何があって作品が書けなくなってしまったのかとか、独身らしい彼が、どんな生活をしていたのかとか、そんなのが、とんと出てこないんです(わずかに、彼が自嘲的に語る所はありました)。
 
唯一、彼女が家のことを忘れられる時間かと思えるコーラスの練習日、その会場になっている「廃校になった学校」に、どうも早めについてしまったらしい彼女(「食堂をやってて、夕方6時にコーラス? お昼だけなのかなぁ、営業…。いや。その日は休業日にしてるのかも…」と、あとであれこれ考える私)。そこにあった楽譜をピアノでなぞってみようとしていて、ある男性に出会います。
 
その人は、そこに忘れていた、その楽譜を取りに来たんですね。彼は、新しくできる統合校の校歌を作りに来ていることを話しますが、彼女の頼みで、その楽譜の曲を弾いてあげます。それが二人の出会いでした。このシーン、何かのドラマで見たような…。学校だけに…。いや、何でもありません。
 
そこまではいいんだけど、やっぱり1時間半は、ストーリーをやり切るには短いんでしょうかね。今回は、「三つの月」、つまり、見る人によって月は違って見える―というテーマのごとく、闘病中のお姑さんなんかもしっかり描かれている分、出逢った二人の心の成り行きがちゃんと描かれてない気がしたんですね。
 
二人が話をしたのは、電話を含め4回ほどです。それで、ああなるかなぁ…と。いや。あるかもしれない。でも、最後にああいう結末…。多分ああなるでしょう。というか、描き方からして、「やっぱりな」の結果になるのはいいんだけど、徹底して描かれているはずの彼女の想いが、どうも中途半端な気がしたんですね。
 
彼女が自分の心の中で、この出逢いについてどうけりをつけたのかさえ、よくわからない。たとえば、終わり近くで、「彼の残していったもの」が、印象的にアップになる…とかがあれば、「ああ。それはそれとして心にとどめ、私はこう生きる」という決意をしたんだな…と察することもできたんだけど、そういうのもない(というか、それをどうしたんだろう)。前の2作では、「ここ、いらないなぁ」と思うところはあったものの、そのあたり、何の不足もなかったんですけどね。もしかしたら、今回、描きたいシーンが多すぎたのかもしれません。あるいは、描きたいことが…。
 
それ以前に、主人公を演じた原田知世さんは、もうひとつ仕事がよくないバイトの従業員一人だけの店の切り盛りと、夜は飲みにばかりでかけている旦那と、家のあれこれと、時には泊り込んだりもしてお姑さんの看病をこなしている、いっぱいいっぱいのお嫁さんにしては、美しすぎました。
 
ちょっと話がすれまずが、こんな話があります。「心配事や我慢がたまると、まず髪のつやや腰がなくなる。さらには、髪型に構わなくなったり、白髪・脱毛にもつながるなど、髪は心の疲れが一番あらわれる場所だ」。
 
確かに…。父や母の闘病中、私もその傾向がありました。円形脱毛症とまではいかなかったけど、抜け毛も多くなり、美容院に行くのも億劫で、「とりあえず、きちんと一つにまとめとこっと!」…って、髪をくるくるっとして、ヘアクリップでパチン! 服装もそういう所がありました。とりあえず、きちんとしてればいいか…的な感じで…(おいおい…)。
 
彼女は、髪も服装もちゃんとおしゃれでした(ドラマだから当たり前か)。透明感があるというのは、こういう所であだになるのかもしれませんね。必死さが出てないんです。そして、心の空っぽさも…(それでも、ご主人に食って掛かるシーンでは、「この人、こういうシーンもできるんだ」とは思いました。失礼ながら…)。
 
よけいなことを知っているというのは、ストーリーに浸りきれなくなるところがあるのかもしれませんね。本筋と違うところが気になってしまう。前に、認知症を扱った「半落ち」という映画を友達に誘われて見に行った時も、見た後で、「あの程度で殺すのなら、うちのおばあちゃん(重度の認知症。10年以上の闘病でした)、何十回となく殺されてるわ」とつい言ってしまい、友だちに「なるほど~」って苦笑いされたことがありましたから。私はこの作品を語るには、あまりふさわしくないのかもしれませんね

一冊の絵本がキーになった、「月に祈るピエロ」。風景の美しさと、主人公二人の一日が素敵に描かれていた「月に行く船」。そして、今回の「三つの月」。

 さて、三作ともにご覧になった方、あなたはどれがお好きでしたか? 
 
「月に祈るピエロ」の時の記事
 
「月に行く船」の時の記事