それは遠い昔。ネットで頻繁に買い物をするなんて考えもしない頃のこと。
どうしても欲しい本があった。行ける範囲では 手に入らなくて、さらに、「古い本なので、注文しても入るかどうかさえわからない」とも言われた。
諦めそうになった時、うちから3時間ほど行った場所にある本屋さんならあるかもと教えてくれる人がいたんだ。
単独行動さえ少ない年頃のこと。さらに初めての場所で、地図を見ながらひとり必死で行き着いた場所に、その本はあった。待っていてくれた。
当たり前のように差し出された包み(いや、当たり前なんだけど)を、急に降りだした雨に濡れないように胸に抱えて駅まで走った。それは遠い午後のこと。幸せな午後のこと。