(前回の続き)
お参りさせていただき、お守りなどいただいてから、ゆっくりと境内をまわります。とにかく小雨の中ですから、あいにくその全体を眺めることはできませんでしたが、ちらりと大山の姿らしきものは見えました。そして、この境内にはこんな道しるべが―。
いくつかある登山道の一つがここにあった…というか、ここからも山頂踏破に行けるんですね。ここはすでに海抜900m台の場所ですから、海抜でいうとあとは800メートル余り。どっかで見た案内図には、3時間ほどで行けると書いてありました。ええ。もちろん行く気はありません(キッパリ)。
なにせ、ここから行く人…というより、「無事に下山できましたとお礼にくる人が多い」…と、夏に誘ってくれた友達とは別の、ここから近いところに住む友達には聞いていました。「だから、この奥宮は健脚の人が行くとこなのよ~」と。彼女は移動のほとんどを車でという人なので、「じゃ、足を鍛えなければ」とか言いながらもなめていた…というか、平地なら10000歩でも歩ける私にはそう大変な道のりでもないだろうと甘く見ていたんですよね。ところが、雨の参道は、こんな風↓だったし、あっちこっち変なところの筋力を使った脚では、石段はとんでもなかった。
(お借りしました)
だから、境内をひと巡りして摂社二つにお参りして石段の上に立った時には、「またこれを下りるんだ」と茫然。そのころから、小やみ加減だった雨が「しっかりした小ぶり」になって来ていて、脚力を使い果たした足には滑らないように歩くのに必死です。「よいしょっと」どころじゃない。「よっ…い…しょ」という感じで、スローモーションになっています。
あと少しというところで、どこからか鈴の音が…。「チリン…。チリン…」。いやいやいやいや。だれもいないから…。「チリン…。チリン…」。あの音はまるで、どっかのホームセンターに売ってあって鳴らしてみた、クマよけの鈴のような…。
熊よけ! えっ? 熊出るの~?! 鈴いるの~? そりゃそうか。山の中だよ、ここ…。などと思いながら石段でそのまま立ちどまっていると、参道の向こうから一人の男性が…。御朱印帳が入るくらいの巾着を一つ持ち、チリンチリンの音とともにタッタカタ~とやって来られます。うそ~っ!! どう見ても、あちらの方が年かさです。なのに、何あの軽い足取り…。透明傘をさしたままだし~。杖ないし~。
「おはよう~」(にっこり)
「…おはようございます」
再びタッタッタ~。今度は軽い足取りで石段を上っていかれます。茫然。
近所の方でしょうか。それとも定年されて御朱印集めの旅でもしてらっしゃる方かしら…なんて思いながらしばらく眺め、「あと3段になった!」と少し急いでおりようとしているところで、「ああ。急がない方がいい! ゆっくりゆっくり…」と後ろから声が…。
チリンチリンとセットです。そう。私が石段を下り切らない間に、もう下りて来られたんです。「ここは雨だと滑るから恐いよ。一足一足ゆっくりゆっくり…」と、アニメであった一休さんの、「一休み一休み」とおんなで調子で言いながら、さっさと抜いていかれました。「チリ~ン」。「はい。ゆっくり行きま~す」。私は力なく、やっとこさ石段を下りきりました。
これは本殿左手にある下山神社
ここにはこんな穴↑がありました。お使いの狐さんがここから出はいりし、見てきた巷の様子を神様にお知らせするんだそうです。働きものだねぇ