モンブランの思い出があります。それは、ずいぶん前のこと。場所は京都。調べ物に出かけていた私は、あるケーキ屋さんに向かっていました。そこのモンブランがおいしいと小耳に挟んでいたからです。
時間は夕方近く。中途半端な時間で、けっこう食べ応えがあるらしいそのケーキを今食べると、夕ご飯が食べられなくなるかも~という時間でしたが、もちろん食べる気です。らくらく日帰りできる京都ですが、その日は泊まりだったので、夜はホテル近くのコンビニでカップラーメンでも買って、それでおしまいにすればいいやという気になってました。
行ってみると、結構高級感があるお店で、やたら歩き回ったほこりくさいやつは、ちょっと場違いな感じでした。客筋が、今で言うセレブ系。教えてくれた人はそうでもないので、時間もあったかもしれません。
まっ、ともかくモンブラン(頭の中は、こればっかり)。コーヒーとともにそれが来るのを待っていたら、隣の50代後半かな~と思える女性お二人の声が、聞くともなしに聞こえてきました。「信じられないでしょう?」(関西弁のニュアンスを残しながら)。
その声の後、モンブラン登場。持ってきてくれたウェイターの男の子に一瞬目を移したものの、すぐに目の前のお皿に集中。とにかくいただきます。
Aさん「二十歳を過ぎたばっかりで、ちょっと誘われたからって、2泊3日の旅行よ。どう思う?」。パクッ(私が)。
Aさん「どんなしつけをしてこられたのかしら…」。モグモグ(もちろん私が…)。
Bさん「で、息子さんは何て言ってらっしゃるの? お付き合いして、ゆくゆくはそのお嬢さんと結婚したいとか…」。パクッ(わた…、しつこいか…)
Aさん「するわけがないでしょう。そんなつもりはないし、させないわよ」。モグ…(口とまる)。
どうもAさんの大学生の息子さんが、某有名女子大の学生さんと旅行に出かけたことについての話らしい。あそこ(その女子大)は、いいお嬢さんがいらっしゃる所だったのに、落ちたものだというような話をAさんはし始めました。ところが、その彼女について、家柄などは知っていても、彼女自身については、殆ど知らないに等しいらしい。頭の中に「??!」。やすきよの漫才のやすしさん風に、言いたいことが頭の中にあふれ出します…。
何の話? 旅行するもせんも、結婚するもせんも勝手やけど、その子に会ってもみんと、それも学校全部を決め付けるような話は、おかしいやろ! だいたいやな~、誘ったのはあんたの息子やろが。よそさんの娘さんがどうのこうの言うより、そっちをなんとかせ~よ!(頭の中、ちょっと変な関西弁…)。
気がついたら、目の前のモンブランが、ない! 頭の中のなかの悶々を抱えながら、口に運んでいる間になくなってしまった~(涙)。私のモンブランを返せ~! セレブじゃない私は、さらに心で叫んだのでした。