クリスマスのいり口で

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 この時期になると、いつも思い出すシーンがあります。

 何年か前の、クリスマス前の日曜。買い物に出かけました。年末のあれこれを準備し、両手いっぱいの荷物を手に、デパ地下を歩いていたとき、焼きたてのパンを売る店に併設されている、パンと飲み物をいただくコーナーに、1人の青年を見つけました。偶然そこで待ち合わせをしていた私は、斜め前から彼をそれとなく観察できる位置に座ることになりました(そこしかあいてなかったんです)。

 そのたたずまいと肌の色で、ひと目で留学生だとわかりました(私の地元には、特徴ある学問で有名な大学があるので、彼のような学生さんを良く見るのです)。仲間達は、帰省してしまったのでしょうか。彼は、そこに1人きりでいました。まっすぐに空(くう)を見つめる瞳は、とても真摯な感じで、それでいて淋しげでした。

 彼の国から日本までは、どれくらいの時間がかかるのでしょう。そして、どれくらい旅費がかかるのでしょう。かなりの時間とお金がかかるのでは、というのは私の想像ですが、彼がその国に帰らなかったことだけは確かです。

 実は私、一人で旅するとき、夕方の商店街が苦手なんです。もうとことん淋しくなってしまう…。日常のあわただしさの中で、よそ者の自分が場違いにそこにいる…。そのことが、かなりにきつい…(涙)。これが外国なら開き直れるし、だれかと一緒なら楽しめるんですけどね…。

 そんな自分と彼が、ダブって見えたんです。家族が寄り添う、ただでさえにぎやかな時期のデパ地下で、たった1人…。そんな自分を、彼はもてあましているように私には見えました。

 何かしてあげたかった…。でも、見知らぬ彼に声をかけるほどの勇気は、私にはありません。まして、何をしてあげることもできやしません。それに、彼がそんな状態なのかどうかさえ、聞いてみないことには、ほんとのことはわからないですよね。彼を見たのは、このとき一度きりでした。

 この時期、同じ場所で、私はつい彼を探してしまいます。もちろん、そこにその人はもういません。今の彼は、ほほ笑んでこの時期を迎えているでしょうか…。彼を囲む暖かな人たちと一緒に…。