鳥取このあいだ話

イメージ 1


 と~んと昔…じゃなくて、鳥取中部地震があってからひと月ほどたった、ある日のことじゃった。

 hikariは、家からそう遠くないところであった、親戚の集まりに出かけたそうな。自分より年上の人ばかりの中に、一人の少女も来ていた。その子はモモ(仮名)といい、ちょうど寺子屋…いや、学校が休みで、また、たまたまその日は家が留守になるとかで、そこに連れてこられていたのじゃった。

 多少こまっしゃくれたことは言うが、まだ小学校3年生。その場にいた、自分の爺さまや婆さま世代の人の中で、おまけに、その子にとってはわからない話ばかりで、ほとほと暇を持て余していた。

 そこに、その人たちと自分との間の年くらいで、やっぱり暇そうなhikariを見つけた。モモはhikariのそばに寄った。そして、相手がわかっているのかどうかもわからない、アニメの話をし続けたのじゃった。hikariは、年の割にモモと対等に話せる頭の軽いやつで、二人は結構盛り上がって話したり遊んだりして時を過ごしたのじゃった。

 そのうち、ようやく宴もお開きとなり、モモは爺さま婆さまと一緒に帰ることになったが、すぐ来ると約束していた親父殿の迎えが遅れていた。そこで困ったのはモモではなく、hikariだった。モモの帰りを見送って帰ろうと思っていたhikariは、飲みすぎたウーロン茶のせいで、厠((かわや)…いや、トイレにすぐにも駆け込みたくなっておったのじゃ。

 hikariiは、焦った。焦りまくった。トイレは玄関の近くにあって、行って行けない距離ではないが、ちゃんとバイバイすると約束したモモの親父殿がその間にきてしまうかもしれない。そして、とうとうその限界を迎え、hikariはとりあえずモモに一応の別れを告げ、急いでトイレに向かったのじゃ。

 実は、その頃のhikariには、困った習慣があった。地震でドアが開かなくなり、トイレから出られなくなったという話をいくつか聞いてから、外出時はともかく、家ではトイレのドアを完全にはしめないようにしておったのじゃ。

 その時はその家のものは外に出ていて誰もいなかったから、hikariは家での時と同じように、鍵をかけず、ほんの少しだけドアを閉め残して中に入った。そして、用を済ませ、ほっとしたとき、モモの声がしたのじゃ。親父殿が到着し、トイレに行ったhikariに、改めてさよならを言いに来たらしい。

 その時、事件が起こった。家の後ろの山の方から吹き降ろしてきた強い風が、ほんのわずかに開けられていたトイレの窓から吹き込んできたのじゃ。同時に、やはりほんのわずか開けられていたトイレのドアも、ぱぁ~~と開いてしもうた。一瞬合った視線。hikariは、慌ててドアのノブを引っ張ったが、タイミングが遅かった。そして、モモはつぶやくように言った。

 「マジですか…」

 「帰るの?」。「うん」。「そうか。またね。さよなら~」という、とり繕うようなやり取りの後、まるで音がなくなってしまったかのような時が過ぎ、hikariはモモが出て言ったものと思いこんで外に出た。ところが、そこにはまだモモがいたのじゃ。hikariは、気まずかった。なかったことにしようと思った。ところが、モモは手を洗うhikariに寄りそうようにして、こう言った。

 「あのね、トイレのドアはちゃんと閉めないとだめだよ。誰が来るかわからないからね」

 それは、わが子に言って聞かせる母親のような言い方じゃった。

 そして、hikariとともにトイレを出たモモは、何事もなかったかのように車に乗り込み、手を振って去っていった。残されたhikariは、これからモモが大きくなっても、あの子にえらそうなことは言えないなぁと思った。そして、モモの家のものに、どうかこの出来事がばれないようにと祈ったのじゃった。

 めでたし、めでたし…(どこがじゃ…













※昔話調に書いてありますが、その中の言葉は、一字一句そのままです…