『光と風の間(はざま)で』総本家

総本家なんで、あれこれあります

やっとこさ【家族ノカタチ】をカタチにする その4

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★淡く深く、きらめく言葉たち~モノローグの存在~


  このドラマのスルメポイント。その一つに、言葉の魅力があります。主にドラマの最初で登場する、大介のモノローグや、大介や葉菜子のセリフはもちろん、親たちが語る言葉たち。見ている側としては、そのそれぞれにふっと心が動く、そんな瞬間があるドラマでした。


  例えば、大介のモノローグには、こんなのがあります。


 
 「笑顔は心の鎧だ。本当の気持ちを隠してくれる。怯えも、動揺も、怒りも、ほとんどの感情はこれで隠せる。そう。笑顔を作ることで…」


 「人の心をかき乱す雑念は、いつだって外からもたらされる。オレ以外の誰かから…。余計な悩みを抱きたくないなら、一人で生きるのがいちばん…」


 「人は基本弱い生き物だ。弱いから高い塀を作って、家に鍵をかける。そして、自分を守る。それが急にノックもしないで家に入りこまれたら…。人に寄り添うって何だ? いい歳してそれもわからないオレは、おかしいのか?」


 「この世のくだらない建前としきたりを凝縮したイベント。それが結婚式だ。それで幸せになれるなら、結婚式だって披露宴だって、好きなだけやってくれ。オレはゴメンだ」


 
 どうです? なかなかのコジレっぷりでしょ? でも特に、「笑顔は…」ってあたりは、見ていて、大介はもとより、演じているご本人にも通じる想いだったりするんじゃないか…と思ったりもして…(実際、このドラマでのモノローグが「自分の心を見透かされているようでいやだった」というようなことを、のちに彼自身もインタビューで語っているようです。特に、このドラマが始まった1月は、彼にとって大変なことがありましたもんね。現実とは違うことを言われても、言い返すことができないか、今はその時ではないと辛抱することで、つらい想いをしていたでしょうし、それ以前にも、いろんなことを抱えていても、笑顔で武装していたことがあったのかもしれませんね)。
 
 こういう大介のような想いは、もしかしたらひとつっくらいは、誰もが一度は抱えたことがあるんじゃないかしら。でも、そんな想いがあったとしても、大体は要領よく立ち回ることができる(というか、何とかやり過ごす)。でも、不器用すぎて、それができない人もいますよね。大介は、そういう人の一人だと思います。自分のこだわりに忠実で、すごく冷静で、物事を客観的に見られる男性(でコジレてる)…と人からは思われているんですけどね。


 そのモノローグも、葉菜子や陽三さんや律子さん、そして、距離を置いてきていた周囲とも、嫌々ながら関わることで少しずつ変わっていきます。


 
 「人との距離は難しい。近くもなれば遠くもなる。一体どれが本当なのかわからない」


 「人は様々な理由で秘密を持つ。親しい人に秘密があると気づいた瞬間、それがたとえ悪意のない秘密だったとしても、相手は苦しむ」


 「本当に誰かを信じたとしても、それで報われるとは限らない。人はそう簡単には変われないから…。それでも、自分を信じてくれる誰かの存在が、人を強くするのかもしれない」


 
 段々と相手の気持ちに想いを馳せるようになっていく大介の変化がわかりますよね。…というか、大介って元々はそういうやつだったんだってことが、回を追うごとにわかってきます。そして、やたらぶつかりながら距離を縮めてきていた葉菜子から、親にさえ話していない秘密を告白された大介は、心でこんな言葉を吐きます。


 「お前はわかってない!わかってないぞ!! オレはそこまでドライでも余裕ある人間でもないぞ、葉菜子…」


 内心、動揺しまくり。えらい変わりようです。その大介のモノローグ。このドラマの最後の方では、こんなのが出てきます。


  
 「やまない雨はない。明けない夜はない。終わらない冬もない。いつか必ず、物事には終わりがやってくる」


  
 これは、ずっと大介のもとにい続けていた陽三さんと弟君が、弟君のお母さんの行方を探すという目的を果たし、故郷の焼津に帰ってくれると思った時の大介のモノローグなんですが、実はこの言葉は、大介がまだ知らされていない「終わり」への序章となっているんです。

 上で、モノローグで彼の想いがわかるという書き方をしましたが、実はそれらのモノローグは、その回やそのあとのテーマでもありました。ですから見る側は、大介がその回の冒頭で繰り出す問題(モノローグ)がどう解かれていくか、「快い答え合わせ」をすることができたんです。そりゃ、すっきり、あるいはホッとして日曜の夜を終われるわけです。(その5に続く)