お稲荷さんは、お揚げ好き?



 今日テレビで伏見稲荷を見かけ、突然思い出した昔話です。

 高校時代のある朝のこと。いつもなら一番か二番目かに来ているはずのクラスメートが、いつもより少し遅れてやってきてこう言ったんです。「おかしなことがあったのよ」。そのおかしなことっていうのが―。

 朝起きたら、家の前にお揚げさん…、油揚げがポトンと一枚だけ、むき出しで置いてあったんですって。「なんだこれ。何でうちの前に?」と思ったら、ご隣さんの話から、ご近所のかなりの家の前にも置いてあって、実はその中の数軒には、前にも何回か置かれていたことがあった…と段々とわかっていったそうなんです。

 まっ、被害があったわけでもなんでもなく、ただ油揚げが届けられただけですから、緊張感も何もない話なんですけど、田舎とは言いながら住宅街。そこにある家々の前に、新鮮な感じの油揚げが落ちている。それも、野良犬か何かがごみをあさって落としていったというのも考えにくく、いたずらにしても数が多すぎる…というか、油揚げとはいえど、わざわざ身銭を切ってそんなアホないたずらをするやつもいないだろう…という食卓話になったときに、彼女のお祖母さんが、「お稲荷さんだ!」といい出されたとか。

 確かにその近くに小さなお稲荷さんがあるんだそうです。で、最初に届けられたのは、その家の亡くなったご老人が熱心にお参りされていた家だったということもあったそうです。確かに、稲荷神社に、油揚げをお供えするというのは聞いたことがある話。でも、そこから油揚げが届くなんて聞いたことがないと他の家族は半笑いで言われたそうですが、お祖母さんは、最近あまり大事にされていないお稲荷さんが、「前の様に、油揚げ持ってこい!」と知らせてきたんだと真顔で言い張られ、「狐がついたという人を、子供のころに見たことがある。うちの誰かがそんなことになったら大変だ」と、彼女が登校するときに、さっそく届いたのと違う油揚げをもってお参りに行かれたそうで…。
 
 あまりに、突拍子もない話で、聞いた私たちも、「なんだそれ」だったのですが、後で聞いたことによると、そうやってお参りに行かれたお宅が何軒かあり、それ以来ぱったりと油揚げが届かなくなったという話でした。結局、誰が何のために置いたのか、まるでわからないままその話も終わりになったとか…。

 人の世には、わけのわからないことがあるものですねぇ。また、どっかに届いているのかしら。




※写真は、ちょうどその頃、伏見稲荷で撮ったもの…だったと思います。