かなり前に、ご近所犬のリュウ君の話を何回かしたことを覚えてらっしゃる方があるでしょうか。
そのお話の中で、今は亡きリュウ君(♂)のいちばんの仲良し、ももちゃん(♀)のお話もしたことがありました。つい先日、そのももちゃんのお宅の前を通りかかる機会があったんです。
ももちゃん、いるかなぁとお庭をのぞき込みました。彼女は、(先日お話した怖い顔のルフィーもそうですが)玄関先のゲージの中にいるんです。柴と秋田犬とのハーフであるももちゃんは、純和風のお宅の中に置くには、いささか大きすぎたからです。
のぞいてみると、ゲージの中にももちゃんがいません。この間のルフィーと同じように、玄関先につながれていたんですね。
「ももちゃん、今日はそこ?」
声を上げたら、座っていたももちゃん、すっくりと起きあがりました。彼女、さかんに尻尾を振ってくれるのですが、しばらくみない間にすっかり貫禄が出来ていました。特に背中からおなか周りが…。それにー。
「汚いでしょう?」
横から声がしました。ももちゃんママです。お庭の掃除をしてらしたようで、ついでにゲージの中の掃除もしようというところだったようです。
「シャンプー、完全拒否なのよ。ぜんぜん洗わせないの。白がグレーになってるでしょ?」
以前のももちゃんは、堅めの白い毛をいつもきれいにシャンプーしてもらっていたんです。
「散歩も、私とは行きたがらないし、食欲は半端じゃないし…」
どうしたんでしょう。私がそばに寄ると、コロンと転がっておなかを見せ、「撫でてよ~」って感じでちょっと甘えてみせます。会ったときはいつもだけど、今日はしつこいまでに甘えてくるんです。
「何で~~~!」
突然、ももちゃんママが叫ばれました。
「完全服従じゃないの!」
聞けば、最近おなかを見せないどころか、ももちゃんママに、自分を一切さわらせないんだそうです。そのももちゃんが、すっかり甘えたそぶりを見せたことに驚かれたようで…。「どうしたんだろう。特に何があったわけでもないのに」と、ももちゃんママはため息です。
うちに向けて歩きながら、そのことを思っていました。ももちゃんの生活は、ももちゃんママが言われるように、特に変わったことはないはずです。変わったことと言えば、同居されている息子さんにお嬢さんが誕生され、ももちゃんママがおばあちゃんになられたことくらい…。
「ああ…」
わかりました。ももちゃん、きっと感じているんです。ももちゃんママの愛情が、赤ちゃんの方に傾いていること…。息子さんばかりで、「うちの一人娘よ」とか言われて溺愛されてきたのに、その自分が入ることの出来ない家に別の大事な存在が出来てしまった。いつも目の前で見ているわけじゃないけど、どっかでそれを感じてカチンと来てるんでしょう。無視に、反抗に、やけ食い…。嫉妬ですよね…。私にいつも以上に甘えて見せたのも、たぶんももちゃんママへの当てつけなんじゃないかなぁ…。
これは、当分続きそう…。
うちの子には、そんな心配はありません。これですから。