『光と風の間(はざま)で』総本家

総本家なんで、あれこれあります

それも神様の都合ですか?~’14 夏の大社詣出 その2~

 日御崎神社は、地図で言えば、島根県の右半分の方にある、島根半島のいちばん先っぽのあたりにあります。どこかで見た公の説明文に、「創設 神世」と書いてある文章があって、思わず目が点になりました。それくらい古い頃からの由緒を持っているということなんですが、神世ねぇ…。
 
 上の宮(神の宮)と下の宮(日沈宮)の二つの社殿から成っているというこの神社、元々は別のところにあったんですって。上の宮にまつられているスサノオさん(正確にはスサノヲノミコトさん)は、おまえは地上へ行けといわれ、「じゃ、コレが落っこちたところに落ち着こ~っと」ってことで、天から柏の葉を落とされ、その葉っぱがはらりと落ちた、この神社の裏の山の中(隠ヶ丘というとこ)にお鎮まりになった…ということらしいんですね(時系列からすると、こっちが先のよう)。
 
 一方、下の宮にまつられているアマテラスさん(正確には、アマテラスオオミカミさん)の方は、「(私は)日の昇るエネルギーに満ちた伊勢で日の本の昼を守り、日の沈むエネルギーに満ちた日御碕で日の本の夜を守る」と言うようなことを宣言され、そこから近い経島(正式な読み方ははっきりとはわからないんですが、タクシーの運転手さんは、その島のことを「ふみじま」と呼んでらっしゃいました)に鎮まられたんだそうです。
 
 これを今の場所に集めたのが日御碕神社なんですね(ほかにも摂社・末社があります)。20数回繰り返されているという社殿の造営は、天皇、あるいは将軍の命を受けて直轄のもとで行なわれているそうです。
 
 そう言えば、オオクニヌシさんの義理のお父さん(奥さんのお父さん)であり、自身の祖先でもある、スサノオさんがいらっしゃることで、「出雲大社の親玉」なんて言い方をされたタクシーの運転手さんもいらっしゃいましたよ(出雲のタクシーの運転手さんって、観光タクシーでなくても、あえて聞かなくても、そして、たとえ行かない場所でも、乗客が観光客だなと思ったら、そういうあれこれを語ってくださるようですよ)。

今の社殿は、徳川三代将軍家光の命によるもの。今回も修復工事をされてましたし、何度も塗り替えされてはいるものの、基本はその時のまま。400年以上前の建物だということになりますね。それも、江戸から名のある匠を派遣して7年くらいかけ、今の価値で言えば30億円くらいの費用をかけたと言いますから、なかなかの力の入れようです。実は伊勢神宮・出雲大社と並ぶ神社だったりするみたい。
 
 そこでアマテラスさんは、さっき書いた「日の本の夜」を守り、海に向って立つスサノオさんは、海の向こうの国々からの災厄を跳ね返す、という役割を果たしておられるんだそうです。
 
 後で少し調べて足した内容もあるけれど、こういう日御碕神社の概略は、行く前に読んではいました。だからこそ、引っかかっていたことがあるんです。夜の神様は、生まれ順で言えばこのお二人の間にいる月読命―ツキヨミさんじゃないの? いや、あれは月の神様だったっけ? とにかく、伊勢では、内宮・外宮の両方にお社を持つツキヨミさんはいらっしゃらないのかしらって…。
 
 だから、運転手さんの話が、ここは日本の夜を守る神社だという話になったときに、聞いてみたんです。「日御碕神社には、月読神社…というようなのはないんですか?」って…。
 
 「月読神社ですか…。ありますよ」(心の声:あるんだ!)
 「ただし、あの山の中に…。地味な、ほんとに小さいお社があるだけですけど…」
 
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                   間にある道は見えてないけど、その奥の山の方です。
 
 
 そ、そんなぁ…。伊勢神宮へ行った時から好感を持つようになっていた月夜見さん(私には、下宮におられる方が相性がいいようだったので、この字の方を)が、そんな扱いだなんて…。
 
 そう思って、「兄弟なのに、何で仲間外れなんでしょう」って聞いてみました。仲間外れにされるなら、たびたび騒動を起こし、あの「アマテラスさん立てこもり事件」を起こしたスサノオさんの方じゃないかと思うんだけど…。
 
 「何ででしょうね…。それは知らんなぁ…。神さんの都合ですかなぁ…」(そこもですか…ーー;)
 
 帰ってから少しネットで見てみたけれど、その事情は定かではありません。もしかしたら、神様の都合というより、作った方の事情かもしれない…とふっと思ったりして…。ここは出雲。スサノオさんのホームグラウンドですから…。
 
 「ほら、これが月読神社に行く道です。地元の集落の人が、歩けるように通り道の草を刈ってくださってるけど、人一人がやっと通れる、この先はほとんど獣道みたいな道ですわなぁ。ごくまれに、行ってみたいと言われる歴史に詳しいお客さんもあって、ここまで来ることもあるけど、この道を見てやめられる方もありますわ」(あるんだ、行きたいという人…)
 
 母が退院してあまりたたないと話していたからか、運転手さん、「行ってみますか?」とは聞かれませんでした。ただ、聞かれても結果は同じ…。少し涼しい風は吹いていたけど、まだ暑い中です。まして途中で何が出てくるかもわからない道を、サンダルで歩く気持ちにはなれなかったですから…。
 
 鬱蒼とした森の中に入っていく細い道。それを見せるために停車して、再び動き出そうとした車窓から、もう一度その暗い道を見上げました。ちょっと寂しい気持ちで…。
 
 まっ、神宮にはツキヨミさんのお社が2社もあるし、そこにはスサノオさんはいらっしゃらない。その辺りのことはもう、闇の中です。神様の都合…。それでいいのかもしれないですね。