思い出のドヤ顔

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1年ぐらい前からでしょうか。「ドヤ顔」という言葉を聞くようになったのは…。どういう顔か知ってらっしゃるとは思いますが、念のために説明しておくと、自分の言ったりしたりした事に満足し、「どうだ。やりきったぞ~」っという顔をして見せること。これを「ドヤ顔」をする…というんですね(たぶん、関西弁の「どや?」から来ていると思うのですが…)。

この言葉を聞くたびに、思い出す人がいます。とても親しかったと言うわけではなく、今はもう会うこともない学生時代の友人なのですが、これがあなた。ほんっとに美人さんだったんですね。その上性格がいい…という珍しい(?)タイプで、「私は世の中のことを知らない。それが恥ずかしい」というのが彼女の口ぐせでした。

普通そんなことを言えば、「何猫かぶってるのよ!(時代によっては、ぶりっ子してるともいう)」と反感を買いそうなものなのですが、そうして見せているのではなく、彼女が天然ものだと誰もが感じていたので、「たぶん、大金持ちのお嬢様なのだろう」という話になっていました(いや。多分そうだっただろうと今でも思っているのですが…)。

彼女の欠点と言えば、多少下半身が太めなことと(どの下半身がそんなことを言うんだと怒らずにおいて~T.T)、ガマガエルが走ったとしたらこんな風だろうという走り方をするくらいのこと。下半身は鍛えればいいし、そういうタイプが好きな人さえいる。あとは、走らなきゃすむことです。人間大人になって血相変えて走らなきゃいけないときは、そんなにはないでしょうから、それは気にすることでもないでしょう。つまり彼女は、例の口癖をつぶやいては「またか…」と言われることはあっても、そのほかのことでは非の打ち所のない美少女と言える人でした。

ある朝、友達の一人がえらく怒った足取りで講義室に入ってきました。そして、バン!と机を叩き、こう叫んだんです。

「もう嫌だ! あんな男、二度と見たくない!」

最初は恋人か何かとけんかしたのかと思ったのですが、よく聞けば、このところ毎日のように、若い男が彼女のアパートの近くの角に立っているというんです。そのことを言っていたんですね。

「それも、全開でよ!」

そこにいたのは女ばかりで、口々に「あんたが、ぎゃーぎゃー言うから面白がられてるんだ」とか、「だったら、道を変えなさい」とか言ったのですが、彼女は、どうしてもそこを通らなければ出かけられないし、一度たりとも騒いだことはないと言うんです。

「だったら警察にでも…」と、誰かが言ったときでした。前の席に座っていた例の彼女が突然振り向いたんです。

「嫌でも、一回だけしっかり見るのよ。で、言ってやればいいの。『小さい』って…」

その言葉に周囲は目が点になり、一瞬静まり返りました。そんなことを言いそうな子が言ったのなら、驚きもしなかったでしょうが、いちばん言いそうもない彼女からそんな言葉が出てくるとは誰も思いもしなかったからです、そんな気配に気づかない彼女はこう続けました。

「いい? 大声で言っちゃ駄目よ。一回しっかり見て、そこから目をそらして、やっと聞こえるくらいの声で言うの。『小さい』って…。大丈夫。そう言ってやれば、2度とそこには立たなくなるから…。やってみて」

そう言った後の晴れやかな「ドヤ顔」。「あ~。私も人の役に立てた」とでも言いたげな満足そうな「ドヤ顔」。その顔を、みんなはしばらくぼ~っと眺め、「そ、そうかもしれないわね~」とか、「そうそう。そうだわ」とうなずき合ったのでした。

ドヤ顔という言葉を聞くと、それを思い出すんですよね。










(画像は当然ながら、内容とはぜんぜん関係ありません)