『光と風の間(はざま)で』総本家

総本家なんで、あれこれあります

ちょっと寄り道(これがおきの島かも)

イメージ 1

イメージ 2

『因幡の白兎』という昔話を御存知の方は多いと思います。このお話、実は、『古事記』に書かれている神話でもあるわけなんですが、多分、こんなストーリーだと思ってらっしゃるんじゃないでしょうか。

ある島に住んでいる白兎が、陸に行きたいと思うようになりました。ただ、さすがに犬かきならぬ「兎かき」あちらまで行ける距離ではなく、海にいるワニ(この辺りにはもちろん普通に言うワニはいないので、サメのことではないかとも言われています)をだましてあちらまで行こうとたくらみました。「仲間の数がどちらが多いか競争しよう。その上に乗って数を数えてやるから、できるだけ多くの仲間を連れてきて、陸まで並んでみろ」と、ワニに持ちかけるんです。ワニは言われたとおりに「道」を作り、白兎はしめしめとその上を進んでいったのですが、陸に着く寸前にはかりごとがばれ、怒ったワニに毛皮を剥ぎ取られてしまいます。

そこを通りかかったのが、後に大国命と呼ばれるようになる、オオアナノムジ(以降、ややこしいので大黒命で通します)の兄神様たち(八十神―やそがみ―と言われるのでそう呼びます)。彼らは、絶世の美女として知られている因幡の八上姫(やがみひめ)を妻にしようとやってきたところだったんです。

丸裸にされた白…かどうかわからなくなった状態の兎は、事情を聞いて、わざと「海水を浴びて、高い山の上で風に当たって寝ていろ」と言った八十神の言葉を信じてそのとおりにしたのですが、治るどころかその皮が裂け、もっと悲惨な状況に。その痛さに泣き苦しむ兎。そこにやってきたのが、八十神に荷物をぜ~んぶ持たされた大国命でした。兎にいきさつを聞いた大国命は、「まず真水で体を洗って、がまの穂の花粉(実際止血効果があるらしい)を取ってその上に寝なさい。そうするとよくなるよ」と教えます。兎はさっきだまされたことも忘れ、すぐにそのとおりにする馬鹿正直さでやってみます。でも、それが功を奏してすっかり元に戻り…で、めでたしめでたし…。

…と大体こんなストーリーだと思ってなかったでしょうか。去年書いたことがありましたが、この先にはもう少しストーリーが続きます。その白兎、占いができたのか、特別な霊力があったのか、大国命に、「八上姫が選ぶのはあなたです!」と宣言します。そして、その宣言どおり、八上姫は大国命を選ぶことになる…とまぁ、こんな話なんですが…。

この神話には、実はすこおし違う説があるようです。まず、この白兎はもともとはその島(おきの島―隠岐島ではない)の兎ではなく、あちら側―陸の兎で、大洪水に流されてその島に行き着き、たった一人で寂しくて、どうしても故郷に帰りたくてワニをだました…というものです。どうです? そう聞くと、ちょっとだけかわいそうな気がしてきませんか? 八十神についても、彼らは決して意地悪をしようとしてそう言ったわけではなく、塩水でうがいするような感覚で、殺菌のために塩水を教えたのでは…という解釈があるそうです。彼らの知識があまり確かではなくて、さらに兎の状態には合わなかったんじゃないか…というんです。

実は、大国命は『古事記』に、少彦名命(すくなひこなのみこと)とともに病気を治す治療法を定めた神様だと書かれていて、「医療の神様」とも言われているそうですから、その兄神様も意地悪で教えたか、兎の症状に合わなかったかは別として、そういう時の治し方の知識の一端くらいはあったかもしれないな、と思ってしまったりもします(神話なのに…^^;)。

さて、この白兎、それからどうなったと思います? 何と神様になってしまうんです。それが、この辺りのパワースポットとも言われる白兎神社のご主祭神の「白兎神」なんです。この↑の逸話のために、創建不明(わからないくらい古い)と言われるこの神社は、病気治療(特に皮膚病)に霊験あらたかといわれ、兎が大国命と八上姫の縁を取り持ったことから、『どなたかいい人』ではなく、『特定の誰か』との縁を結び、遠距離にいる大切な人が、ここに祈れば早く戻ってくるといういわれがある神社なんです(と私は、最近知った)。ここ最近は、えらく人が多いんですよ。兎君。大国さんに恩を感じて今もがんばっているわけです。えらいでしょ?(おいおい…^^;) 




(画像は、丸裸にされた兎が立った?白兎海岸近くの島。付近には島が二つあるのですが、兎が仲間がいるように思わせることができるような広さと鳥居のあるほうがおきの島だと思うのでその島の姿です。割と近そうに見えますが、写真で見るよりは距離があるかな)。