ちょっと込み入った話です。
実は、遠縁に当たる近所の八十代のおばさまが倒れられました。夜更けに救急車が近くに来たのはわかっていて、帰っていく救急車のサイレンが聞こえないなと思ってはいたんですが、その方だとは思いませんでした。
それがわかったのは、我が家にそのお宅の隣の方が電話をしてこられたからです。その方の息子さんがかかりつけのお医者様を呼ばれたらしいのですが、総合病院でないとその治療は無理ということで、先生が救急車を呼んでらっしゃるうちに、その息子さんが消えてしまった…というんです。
その息子さん、ちょっと訳ありで、ご近所さんに家にいることを知られたくなかったらしいんですね(この騒ぎでバレちゃったけど…^^;)。で、「救急搬送の人が、家族か親族に同乗してもらわないと運ぶことはできないと動けずに困っているから、遠縁に当たる我が家-うちの母ーに行ってくれないか」というんです。
母は早朝から出かける予定だったのですが、そのことは言わず、「申し訳ないけど、私は行きません」ときっぱりと言いました。ちょっとびっくり。母がそういう断り方をしたのを、はじめてみたからです。というか、親戚親類関係ではすぐに動くい人だと思っていたのですが…。結局、我が家が断ったそのすぐ後、そのかかりつけの先生が同乗されて救急車は動き出しました。
「行かなくてよかったの?」と聞くと、「これまでにどれくらいその方のことでいやな想いをしてきたか、わかってるでしょう?」と、母は話し始めました。私の知らなかった過去の話も…。
あることないこと…ならまだいいけれど、火のないところに悪意を持って無理やり煙を立てるようなやり方にずっと我慢ができなかった。でも、父方の方だから、そういうことがあってもこらえてきたし、ご主人が亡くなったときには、できる限りのことはさせていただいた。それで義理は果たせたと思っている。そのご主人も父も亡くなった今、その方に不本意な想いで付き添っていく義理はないと思うと言うんですね。というより、「行きたくない」と言うんです。
「大体、我が家でないと近所に親戚がないわけではないのに、何故うちに電話をかけてこられたと思う? 我が家に電話してこられるより先にあちこちで断られてきてるからよ」
そう。だから、30~40分も…だったんでしょう(実際、断ったという話を後であるお宅から聞きましたし)。救急車が、重篤な患者ではないとはいいながら、それだけ動かずにいるのは普通じゃありません。
父のことがあってから、そのお宅そのお宅でお付き合いの個別のやり方があっていいし、ほかの家がとやかく言う必要はないと思うようになっていたので、「それならそれでいい。そういう方向で行きましょう」と了解したのですが、「救急車に家族か親族が同乗しなくちゃ動けない」って…。交通事故とかのときにそんなことを言ってたら、どうなってしまうでしょう…ーー;。
友達との電話の途中で救急車の話が出たので、そのことを話すと、彼女いわく、「事故は別として、そういうのは医療費の問題じゃないの?」と。
ご家族が入院されたことがある方は、ご存知だと思いますが、入院手続きをするときには、家族がもし医療費を払えなかったときに、それを代わって支払うことができる別居の親族の署名捺印を請求されるんですね。その時に、「実は、医療費を払わずに逃げてしまう人がいるので、そういう処置をするようになった」という話を聞いてはいたんです。それにしても、救急車でもそうなんですかね…???
母の割り切り。そして、救急車の対応。ちょっと驚きの出来事でした。