探し物をしていて、「確か中にあったような…」と思って久しぶりに開いた万葉集。開いたページに、「これだ、これだ」と声を上げたのは、こんな歌のやり取りでした。
長月の その初雁の 使いにも 思う心は 聞こえ来ぬかも
9月頃になると、初雁が渡ってきますよね。その初雁を使いにしてでも、お気持ちを聞くことはできないだろうか(お心を伝えてはくださいませんか?)というような意味になるでしょうか…。
実は、これは桜井王という人が時の天皇にあてて送った歌なのですが、彼は何かの許しでも請うたのでしょうか…。これに対して、聖武天皇はこんな風に返しています。
大の浦 その長浜に 寄する波 ゆたけく君を 思ふこの頃
大の浦っていうのがどこにあるのか調べてみないと分からないけど、その大の浦の海岸に寄せる波のように ゆったりとあなたのことを思うこの頃だよ、という意味ですかね。鷹揚に、「いいよ。思うようにやってごらん」と言っている感じでしょうか…。
恋の歌ではないみたいだけど、そういう風にみてもおもしろいですよね。その心がわからない。で、「どう思ってるの?」。「とってもゆったりした気持ちで、君の事を思ってるよ」…なんてね…^^;。
実は、私の探し物は、この「ゆたけく」という言葉だったんです…。そうそう。桜井王のある歌に関連して、こんな切ない歌もあるんですよ。
冬霧の 湖(うみ)を薄ら氷 踏み渡り 心ほそくも 遂げん我が恋
よみびとしらず…ですが、心細げで、それでいて背筋の延びた強い意志を感じさせる歌でしょ? ちょっと寄り道してみました…^^;。
やっぱり万葉集いいな~。理屈じゃないんですよね~。よけいなことはおいといて、ゆたけく君を…。いいと思いません? 今夜は、ゆたけく君の、いい夢を見てくださいね。