『マリッジ・リング』
その店で 会ったのは
偶然だった
私に気づいたそのひとは
懐かしさ いっぱいの顔で 隣に座る
なにげない世間話 つづけた挙句
”今もひとりなのは
いけない恋を してるからか”と
半分真顔で そのひとはきいた
”仕事は それなりに
がんばってるよ
痛い目みても
心底 落ち込まないくらいには
おとなになれたしね”
わたしは それだけいって
笑ってみせた
わかるわけない
あなたには
夢を追うのは あなたのいう
ばかな男だけの 専売特許じゃない
シャンプーしたての 洗い髪
夜風に さらして
誰にともなく つぶやいてみる
女の分だけ かなしさ知って
齢の分だけ せつなさ知って
そんな恋できないよ
たぶん 相手が
あの頃のままの
あなたであってもー