『かけだせば夏』
山へ行っているはずのひとが
突然あいにくるという
”山間の茂みの中
たった一輪
姫百合を見つけたんだ”
そしたら たまらなくあいたくなったと
受話器の向こうのひとはいった
いつもの足取りで
きっとあなたは歩くから
ぼやぼやしてたら この家の前
どんどん過ぎていきそうで
急がなくては
急がなくては
せめて 心だけは
置いてきぼりを くわないように
さえぎる遮断機 行き交う車両
はずむ息の向こう側
大きく手を振る わたしの姫百合をみつけた