『水蜜桃』
あなたが何度も繰り返す
耳元でささやくように
僕の言葉を 忘れないでと
後ろ向きねと 私は笑う
後ずさりする人が いるからねと
あなたも笑った
いつからか さよならのたび
ふたりは じゃれあうようになった
互いがいない時間を
埋めあうように
並んで歩き出せない
心が二つ
戸惑いも 心細さも
手ばなせぬまま
握った手 強く引いて
待てるかと その人は聞いた
ねぇ ひぐらしが鳴いてる