2006-06-29 闇 夏の野の… #その他文学 『闇』 草のにおいがした 小川の流れ 遠い山のシルエット 夕方の雨が からかうように 木立から降りてくる夜 きえてはともる小さな光に ため息をついた ‘逃げないで’って いつか言ったよね あのときは 答えられなかったけど 今なら 言えるよ けして逃げない と 闇のなか ‘必ず‘と その人は言った ‘必ずね’と わたしは 応えた たしかなものは この手のぬくもりだけ でも 歩いていける 迷わずに 夜の風が 吹いた 草のにおいがした