『闇』
草のにおいがした
小川の流れ
遠い山のシルエット
夕方の雨が からかうように
木立から降りてくる夜
きえてはともる小さな光に
ため息をついた
‘逃げないで’って いつか言ったよね
あのときは 答えられなかったけど
今なら 言えるよ
けして逃げない と
闇のなか
‘必ず‘と その人は言った
‘必ずね’と わたしは 応えた
たしかなものは
この手のぬくもりだけ
でも 歩いていける
迷わずに
夜の風が 吹いた
草のにおいがした