Mの悲劇

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 昨日のことでした。うちの母が、近所のおば様に偶然であったそうです。そのおば様は、真新しい電動自転車に乗っておられて、「うちのみー君が、インターネットでいろいろ調べてくれて、買ってくれたの。ちょっと乗ってみない?」と、うきうきと話されたそうです。
 みー君(仮名)は、私の同級生。大学時代にお父さまを亡くし、卒業以来、ある意味父親代わりになって、弟妹の面倒を見てきた人で、休日になると、お母様をあちこちドライブに連れて行ってあげる孝行息子です。その話の途中で、「ほんといい息子さんね」とほめると、「親がこんなこと言うのもなんだけど、そうなのよ~。だから、もうあんなことがないようにしないと…」とおっしゃったとか。
 
 それは、ちょうど去年の今頃のこと。みー君(再び仮名)の家に、一本の電話がありました。3時のお茶中のお母様が出られると、電話の相手の男は、こんなことを話したそうです。
 実は、みー君にはあるスナックに親しい関係の女性がいた。彼女が妊娠し、結婚をと申し出たが、みー君は、「親父を亡くし苦労を掛けてきた母は、とても厳格で古いタイプの人。バツ2で、スナックづとめの君との結婚を認めてくれないと思う。もうしわけないが、おろしてくれ」と言ったというのです。
 
 みー君を愛していて、どうしても子供を生みたいと思った彼女は、みー君と別れ、店もやめたが、今生活が立ち行かなくなった上に、出産予定日が目の前だとか。
 彼女が住むアパートの大家を名乗る彼は、「あまりにもかわいそうなので、おせっかいかとは思ったが、せめて出産の費用だけでも出してあげて欲しいと思って口を出した。会社の方に電話してと思ったが、お立場もあることだから、お宅のほうに電話させていただいたのだ」と言ったそうです。
 そして話の最後には、問題の彼女も登場し、みー君の弟さんの職業や持っている資格、妹さんたちの嫁ぎ先まで、ちゃんと把握していることを話し、涙ながらに「ごめんなさい」を繰り返したというのです。

 おば様は慌てました。早くから役職につき、それなりの会社での地位を持つみー君です。会社に駆け込まれでもしたら大変と、「お金を作りますから時間をください」といったん電話を切り、ご自分の弟さんのところに、電話をされたんです。
 家のお金は、基本的にみー君が管理していて、まとまったお金のないおば様ですから、事情を話して立て替えてもらおうとされたのです。弟さんも、大事なおいの一大事とばかりに、「よしわかった! 金の心配はするな!」と、次の電話を待つように指示して電話を切られたとか。

 そこに偶然電話してきたのは、みー君の妹さんでした。おば様があ~でこ~でと事の成り行きを説明されると、妹さんは、「馬鹿じゃないの~!」と一喝したそうです。
 「あんたね~。あの仕事人間が、いつバーやスナックに入り浸ってたって言うのよ。日曜ごとに、あんた連れ歩いてる人に、彼女なんかいるわけがないじゃない。だいたいねぇ、そんなことが出来るくらいなら、とっくの昔に結婚してるわよ!」。
 おばさん、ぽかーん。そうだ、その通りだと思ったら、足がへなへな…。
 「それでも、男と女のこと。10万分の一にでも、可能がないとは私も言えないから、一応聞いてみるけど、あんた、今日お兄ちゃんにしかられるの、覚悟しときなさいよ!」。
 娘さんは、そういって電話を切られたそうです。もうしっかり、「あんた」扱い…。

 もちろん、その話は嘘だったのですが、みー君はおば様をしかりませんでした。それどころの怒りじゃなかったんです。半月お母さんと口をきかなかったらしいですよ。そりゃそーだ。私の知る限り彼は、相手の職業や立場で人を決め付けるようなヤツではなかったし、そういう逃げ方をするヤツでもなかった。たとえば、その妊娠話がほんとうだとしたら、こういう人だよと紹介して、説得し、結婚にこぎつけたでしょう。何より、そんなことをするヤツではないと親に信じてもらえなかったのがショックだったんだと思うなぁ…。

 「ほんとにね~。私があんなモンに引っかかるわけがないと思ってたのに…」。だんだん巧妙化する、振り込めサギ。この1年の間にも、進化してるんでしょうね。